酒井将弁護士及び
ベリーベスト法律事務所の
一連の主張について
令和2年7月3日
アディーレ法律事務所
弁護士鈴木淳巳
はじめに
当職は、平成30年1月よりアディーレ法律事務所の代表弁護士をしている者です。
弁護士法人ベリーベスト法律事務所及びその代表社員であった酒井将弁護士(いずれも業務停止中,以下「酒井弁護士」という。)が、酒井弁護士の個人ツイッターなどを通じ、「スパイ行為をしている」などと一方的に弊事務所に対するいわれなき主張を行っていますが、これに反論することは、SNSの特性上、虚偽の事実拡散に加担することになるため、これまで無視していました。
ただ、この度、ベリーベスト法律事務所所属の久保田弁護士のユーチューブチャンネル(令和2年7月3日現在チャンネル登録数22万6000人)を利用して、名誉毀損行為を公然と行っていることを確認したため、代表社員である当職の見解を、端的に公表することにしました。
当職の見解の概要
1 弊事務所のスパイ行為との主張について
弁護士法人ベリーベスト法律事務所及び酒井将弁護士は、「A事務所」などとされていますが、酒井弁護士がいうA事務所が弊事務所であるかのような推認をさせようとしていることは明らかです。ただ、そもそも、スパイ行為などある訳もなく、証拠があると言いながら証拠が一切提出されておらず、事実無根です。このように事実無根の主張をすることは、名誉毀損にあたります。この点について説明します。
→ この点についての詳細は、こちらで説明します。
2 新宿事務所との非弁提携行為があたかも依頼者の利益であるとの主張について
弁護士法人ベリーベスト法律事務所及び酒井弁護士は、情報格差を利用し、あたかも新宿事務所との非弁提携行為が正義のためであり、それを旧態依然の体質を持つ弁護士会が懲戒処分することが悪であるという構造を意図的に作出しています。このような債務整理事件の実情を知らない法曹及び一般人の誤認を誘導するベリーベスト法律事務所側の主張について、債務整理事件に精通する法律事務所の代表社員の立場から、一般読者、視聴者の方にも適切な判断の前提となる事実を補足し、同事務所の主張の問題点を指摘します。
→ この点についての詳細は、こちらで説明します。
3 規定の遵守の必要性についての考え方
弊事務所も過去に景品表示法違反に基づく業務停止処分を受けておりますが、規定の遵守を重んじ、処分を重く受け止めております。しかし、酒井将弁護士及びベリーベスト法律事務所は、業務停止期間中でありながら広告を辞めず、規定の潜脱を継続しており、規則の遵守に対する考え方に疑問を抱かざるを得ません。この点について「いわゆる新興大手法律事務所は同じ」などという誤解を招かぬよう、弊事務所としての考えを述べます。
→ この点についての詳細は、こちらで説明します。
4 今後の方向性について
当職は、インターネット等を利用した他事務所の批判等は、弁護士職務基本規定70条の趣旨より、弁護士が守るべき義務として禁止されているとの理解であり、本見解の掲示は、ベリーベスト法律事務所側及び酒井弁護士に対するやむを得ない対抗措置となります。
本書面の掲示期間は、酒井弁護士側の掲示期間を基準とし、必要性が解消され次第削除します。無為の論争に付き合うつもりはありません。読者の方には、「一方の主張を信じればいいものではない」ということをご理解いただければ幸いです。
以後は、最後に述べる酒井弁護士及びこれに加担する法人及び人物に対する、当職が取る措置により、裁判所等で粛々と本件の問題を進めていきます。
→ この点についての詳細は、こちらで説明します。
1 弊事務所のスパイ行為との主張について
(1)名誉毀損の事実の摘示
A事務所などとされていますが、債務整理事件の競合事務所、業務停止処分、Aの次はBなど全体の文脈から、容易に視聴者が特定可能であり、酒井弁護士がいうA事務所が弊事務所をさすことは、明らかです。
(2)回答
事実無根です。
(3)主張
動画で証拠を掴んでいるなどと述べていますが、証拠は一切提出されていません。東京弁護士会の綱紀委員会規定では、懲戒請求者が提出した証拠は被請求者に送付されることとなっています。弊事務所には、一切その証拠が届いていません。懲戒請求から既に半年以上経過しています。反対尋問(反論)の機会も与えない供述証拠に、証拠価値はないこと、ご承知おきのとおりです。
(4)補足(根拠のない事実に基づき被害者であるかのように言っていること)
酒井弁護士は、動画上で、民事刑事上の措置を取らない理由を懲戒請求のみ除斥期間があるからなどと述べ、あたかも証拠も請求根拠もあるが、自制しているような印象を視聴者が受ける発言をしていますが、誤導回避のため指摘します。
視聴者に真偽不明の事実の有無は措くとして(上記)、酒井弁護士が主張する事実から民事刑事上の措置を取る根拠がないことは、自明です。
不正競争防止法の「秘密」に違法秘密は含まれません。保護法益が同じであれば、一般不法行為でも同様です。
非弁提携行為は違法です。ベリーベスト法律事務所の元職員が、新宿事務所との非弁提携行為の証拠を懲戒請求のために持ち出したとして、違法秘密は保護の対象となりません。そもそも、保護対象外の違法秘密を有していること自体について、一切非を認めず、法的保護の対象とされない秘密の持出行為もって、あたかも純粋な営業秘密をライバル企業に持ち出された被害者かのような文脈で主張すること自体、懲戒請求に対する反論にもなっていないどころか、批判の矛先を不当に他者に向ける許されざる行為です。
(5)補足2(当職個人への名誉毀損)
酒井弁護士が,動画中代表弁護士への懲戒請求をしたなどと主張していますが,これ自体事実ではありません。既に2万名を超える視聴者が,代表弁護士である当職が,スパイ行為に関与,指示したなどと視聴者に受け取られる発言を視聴していること自体,到底許容しがたいもので,強く個人の名誉を棄損されました。
2 新宿事務所との非弁提携行為が依頼者の利益であるとの主張について
(1)酒井弁護士の主張
酒井弁護士は、新宿事務所との非弁提携行為が、依頼者救済のためのワンストップサービスにつながることを、正当化根拠、これを規制する弁護士会に対する攻撃要素としています。一部は一理ある主張です。ワンストップサービスの必要性や、司法書士との引継ぎルールの必要性は否定しません。
しかし、「本件」における新宿事務所とベリーベスト法律事務所の非弁提携行為は、非弁提携行為を法ないし弁護士職務基本規定が禁止する趣旨に反し、現に被害者を生み出すことの重大な寄与をしました。
(2)弁護士職務基本規程と司法書士業界のルール
弁護士ないし弁護士法人は、弁護士法及び弁護士職務基本規定を遵守する義務があります。特に債務整理については、平成23年に成立した債務整理事件の処理の規律を定める規定(以下「債務整理規定」といいます。」を遵守する義務があります。同規定では、弁護士報酬の規制、直接面談原則の義務規定があります。弁護士は、同規定を遵守する必要があります。規定違反は、懲戒事由となりえます。当然弊事務所も規定成立以前から現在まで遵守しています。
一方、司法書士法人には、「債務整理事件における報酬に関する指針」という弁護士会の債務整理規定に準ずる報酬規制がありますが、「指針」であるため拘束力がありません。
(3)新宿事務所との提携の状況
上記のようなルールがあるにもかかわらず、弁護士会の債務整理規程成立以降も、一部の司法書士法人が指針を遵守せず、指針の基準とかけ離れた高額の報酬の設定をするという状況が継続していました。その一部の司法書士法人に代表されるのが司法書士法人新宿事務所であり、ベリーベスト法律事務所は、この事務所と提携をしていました。
同事務所は、指針の2.69倍(減額報酬部分)の報酬を取得する(H28.2.6朝日新聞)過払い金返還を煽る広告,返還期限(時効)を誤解させる広告(H27.8.1産経新聞)を出したという指摘の他、委任状の偽造の疑惑(H27.10.28 BusinessJournal)など、債務整理規定や広告規定を遵守する法律事務所(司法書士事務所)ではなく、同事務所への依頼者数が増加することは、債務整理規程が報酬制限等を設けた趣旨を没却するものでした。
ベリーベスト法律事務所が、新宿事務所と提携することは、結果的に上記の基準に違反する新宿事務所の依頼者を増やすことの大きく寄与していたものです。
(4)提携によってもたらされた不利益
この提携によってベリーベスト法律事務所が得たものを分かりやすく示すために、新宿事務所が「広告」を出稿したうえで残る広告費控除後売上(見込)額の差異を示します。
例えば、過払い金返還請求事件の依頼者のうち、5割が司法書士の取扱いが可能な140万円を超えると仮定します。
新宿事務所が、適法に業務を行う限り(故意に権利を縮減し140万円以下の請求等にしない限り)取扱い可能な範囲を超えますから、当該依頼者は、辞任し、せいぜい委任の履行割合に関する請求を行わざるを得ません。しかし、金銭を目的とし,多重債務に苦しんでいた方が多く含まれる過払い金返還請求の依頼者に対し、140万円を超えたら、金銭を獲得してもいないのに履行割合を請求するなどという説明をすれば、依頼者が、弁護士ではなく司法書士を選択する大きな阻害理由となりますので現実的ではありません。
例を挙げると、仮に提携がない場合の新宿事務所の収支構造は以下のようになります(※あくまでも構造であり、数字はイメージです)。
A 提携していない場合 | |
---|---|
広告費 | 10000万円 |
依頼者(債権者数) | 2000人 |
140万円以下の依頼者割合 | 0.5 |
報酬(※100万円を平均とした場合) | 26万9000円 |
2000×0.5×269000-10000万=1億6900万円 |
一方、本件提携のように140万円を超える依頼者については、一律19万8000円でベリーベスト法律事務所が事務手数料を支払ってくれるという約束(担保)があると、上記の収支構造は以下のように変化します。
B 提携した場合 | |
---|---|
2000×0.5×269000+2000×0.5×198000-10000万=3億6700万円 広告費控除後の金額が倍以上に増えます。 |
上記が意味するところは、「本来であれば取扱いできない依頼者について、収益化できることによって、広告費を圧倒的に増額できる」ことを意味します。すなわち、新宿事務所は、ベリーベスト法律事務所との提携があってこそ、計算可能な収益として、広告費を増やすことができたということです。
いうまでもなく、広告費が増えれば、依頼者が増えます。依頼者が増えれば、減額報酬について、他の債務整理規定(指針)を遵守している事務所の2.69倍の報酬を支払わなければいけない依頼者が増えます。新宿事務所の依頼者が増えれば、上記の被害者による収入増を基礎とした新宿事務所の広告費増額の恩恵をベリーベスト法律事務所が受けます。その結果、債務性整理規定を愚直に遵守している弁護士や司法書士の公正な競争条件が損なわれます。このようにして他の弁護士等が遵守しているよりも不当に高い報酬を支払わざるを得ない多数の依頼者(被害者)が出る結果となりました。
これが、新宿事務所とベリーベスト法律事務所が平成27年4月に提携した結果、現実に生じた不利益です。酒井弁護士は、あたかも被害者がいないのに懲戒処分を受けたかのように述べていますが、被害者は確実に存在します。
(5)ベリーベスト法律事務所が行った非弁提携が許されるものではないこと
指針違反が違法でないとしても、違法でなければ何をやってもよいというわけではありません。違法でなければ、弁護士であれば、許されていない行為に加担してよいことにもなりません。少なくとも、非弁提携行為を正当化する要素になるわけがありません。
弁護士であれば許されない報酬を取っている司法書士法人の営業活動を結果的に加担することを十分に了知しながら、また、そのことが、弁護士や司法書士間の公正な競争条件を阻害(※)することを十分に了知しながら、自社の利益のみのために新宿事務所との提携により実質紹介料の19万8000円を支払うこととしたのは、倫理的にも十分に非難されるべきことです。
※なお、公正な競争条件の阻害という意味では、弊事務所の景品表示法違反も同様です。ただ、十分に理解の上で、反省、処分を受け、再発の余地がないよう是正しています。
3 規定の遵守の必要性についての考え方
(1)弊事務所の立場
弊事務所は、ベリーベスト法律事務所と同じく、平成29年10月に景品表示法違反に基づく業務停止2か月の懲戒処分を受けていますが、規定の遵守に関する考え方は全く異なります。
弊事務所は、日本最大の拠点数を有していますが、もとより、前代表の石丸が、平成23年成立の債務整理規定の直接面談規定を遵守するため、どの事務所にも先駆けて支店展開を進めたものです。債務整理規定の中でも、特に直接面談の原則については、必ずしも依頼者の利益にならないとの問題意識はもちつつ、弁護士会の規則である以上、議論により変更できない限り従うことが当然であると考えてきました。
紹介料についても、弊事務所の知名度を理由に、紹介料の禁止、非弁提携を潜脱するスキームを提案する業者が存在しますが、当然ながら一切応じることはありません。このことは自社の利益になるか否かは関係ありません。自らの価値判断で、遵守すべき規則を変えることができるとすれば、法治国家は成り立ちえません。ましてや、弁護士が法や規則を遵守することは当然です。
業務停止処分についても、弊事務所は、処分の相当性については、強い不服を持ちつつ、業務停止処分を受けた法律事務所が遵守すべき基準はすべて遵守しました。すべての依頼者の委任契約を解除することは勿論、業務停止処分を受けた当日夜には、すべてのサイトを閉鎖しました。業務停止期間中も東京弁護士会の個別の許可を受けた事項の他は、一切の発信をしていません。
(2)ベリーベスト法律事務所が業務停止中に実質広告を継続していること
弁護士法人ベリーベスト法律事務所は、上記のように、当然に非難、処分されてしかるべき非弁提携行為を行いながら、業務停止処分を潜脱するために、三法人に分割しました。これにより、業務停止処分を受けても、一切の委任契約の解除による顧客の喪失を回避し、非弁提携行為による被害者の作出への重大な寄与という行為に対するサンクションを受けることなく、過去の非弁提携行為の利益を保持・享受しました。また、業務停止処分中も、分割法人が広告を継続し、集客を行っています。
私が、ベリーベスト法律事務所と比較される競合法律事務所の代表者として、最も非難すべきと考えるのは、ベリーベスト法律事務所のホームページにおいては、「弁護士法人ベリーベスト法律事務所は無関係」であると明確にうたいながら、現在のベリーベスト法律事務所の各商品のホームページで強調する過去の実績は、その無関係であるはずの「弁護士法人ベリーベスト法律事務所」の過去の実績を明らかに援用し、不当な誤導、誤認を伴う広告表示を行っていることです。
これは、業務広告規定違反の他、景品表示法違反に該たる不当表示です。
弁護士法人ベリーベスト法律事務所が「組合契約」により、他の二法人と「ベリーベスト法律事務所」という組合を締結したと仮定しても(当職はかかる契約は無効と考えます)、合併のように法人格を一としたものではありません。業務停止処分前に組合契約が解消されたのであれば、弁護士法人ベリーベスト法律事務所の組合契約締結前の過去の実績を、無関係であるはずの現在のベリーベスト法律事務所が引き継ぐ法的根拠は一切ありません。
(3)ベリーベスト法律事務所が集客用サイトをも閉鎖していないこと
また、現在のベリーベスト法律事務所は、『Leagal Mall』というオウンドメディアにより集客を行っていますが、『Leagal Mall』のドメイン保有者は「弁護士法人ベリーベスト法律事務所」であることを確認しています。
業務広告が禁止され、本来であれば閉鎖しなければならない業務停止中の弁護士法人のサイトを利用して、潜脱のために分裂した同名(旧事務所名)の法律事務所が集客を続けることは、許される行為である訳がありません。
(4)ベリーベスト法律事務所の潜脱行為は非難されるべきこと
なお、弊事務所は、期間限定表示を継続したことを理由に業務停止処分を受けていますが、当時においては期間限定表示の延長が景品業務法違反に当たるとの認識が一般化していたとはいえず、現に弊事務所以外の複数の法律事務所が、弊事務所と同様の期間限定表示の延長の繰り返しを行っていたことを把握していました。その法律事務所の中に、弁護士法人ベリーベスト法律事務所が含まれます。
景品表示法違反を犯した弊事務所が、他に違反表示をしていた事務所があるとして、巻き込むように懲戒請求を行うことは、非生産的であると考え、当時は行動に移すことはありませんでした。しかし、弊事務所のみが処分を受けたからと言って、法律事務所で過去の広告を反省、是正すべきであったのは、弊事務所のみではありません。
そして、上記のように、弊事務所が業務停止処分を受けた景品表示法違反と同様の広告表示を行っていたベリーベスト法律事務所が、弊事務所の業務停止処分による反省の契機を活かすことなく、懲戒処分の潜脱のために、またしても依頼者の不当な誤導、誤認を伴う広告表示をしているものです。
当職は、上記の一連のベリーベスト法律事務所の規定非遵守の姿勢は、強く非難されるべきであり、また、適切に処分を受けてしかるべきものと考えます。
4 今後の当職の酒井弁護士及びその関係法人等に対する対応について
当職より、酒井弁護士及び自らのアカウントを用いて動画を公開した久保田弁護士等に対し、名誉毀損による損害賠償請求訴訟を提起します。
また、弁護士法人ベリーベスト法律事務所、ベリーベスト弁護士法人、弁護士法人VERYBEST及びその社員弁護士に対し、懲戒処分の潜脱過程における規程違反及び上記不当広告等を理由とする懲戒請求を申し立てます。酒井弁護士及び久保田弁護士については,上記名誉毀損による懲戒申立も含みます。
その後は、上記については、粛々と裁判所等での手続を進めていく予定です。
以上